障がい者雇用を進める上で重要となる「適する業務」の探し方
3月27日に「令和5年度障害者雇用実態調査の結果」が公表されました。この調査は5年ごとに実施されていて、今後の障害者の雇用施策の検討や立案に役立てることを目的にして、調査の実施と活用がされています。
*令和5年度障害者雇用実態調査(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39062.html
結果の詳細は割愛しますが、「雇用するに当たっての課題」についてもまとめられていて、以下の図のように「会社内に適当な仕事があるか」は障害種別に関係なく多くの回答割合を示しています。
このコラムでは、企業側で課題や悩ましさを感じる「適する仕事」をテーマにして、業務の探し方と雇用に向けた進め方を解説したいと思います。
社内の困りごとを洗い出す
障がい者雇用を始める上では、会社にとってメリットとなる雇用であることが理想に思います。
そう考えると、「社内の困りごと」に対して障がい者雇用が何かしらの形で貢献することができれば、社内でも雇用をメリットと感じることができるのではないでしょうか
「困りごと」は、以下をヒントに探していくのがオススメです。
・成長中の部署
・残業が多い部署
・業務集約などで定型化しやすい業務
困りごとは経営陣や人事、総務等の本社にヒアリングするのが望ましく、ヒアリングの内容を社内全体の課題感と理想の雇用に結びつけていくことでその先の雇用推進にも繋がっていきます。
任せたい業務を洗い出す
次に、障がい者雇用で任せたい仕事の検討です。
ここでは、前述の困っている業務の「量」「必要なスキル」「業務の特性」をポイントにして情報整理し、任せたい仕事を検討していきます。
具体的には、各部署もしくは前述で挙がった成長中の部署や残業が多い部署などにヒアリング(下記)をします。
・業務を担当する社員の職種や人数
・困っている業務の頻度や量
(月・週・日等の頻度、月の総時間数など)
・必要なスキル(専門知識の必要性、習得に要する時間)
・業務の特性(判断する力、コミュニケーションする力、納期やスピード感)
ここで特に重要になるのは、「業務の特性」。
例えば、自閉症や発達障がい、知的障がいなどの方で考えてみると、診断名が同じでもあっても障がい特性や得意苦手、配慮事項などは多様でもあります。
それに、障がい特性として、指示理解、対人コミュニケーション、時間管理、ストレス処理などが苦手な場合もあり、業務特性との相性は重要となります。
業務特性を検討する際は、判断力や納期などに加えて、他者とどれくらいのコミュニケーションを取る必要があるかも検討します。
「判断のための基準値がある」「納期は比較的緩やか」「報連相ができれば良い」など、業務特性から障がい特性を検討することで任せたい業務も見えていきます。
付加価値から経営判断する
任せたい仕事についてはただ単に任せるだけでなく、付加価値の検討も必要です。
例えば、障がい者雇用に仕事を任せることができれば、「取引先やお客様と接する時間が増える」「本来業務に集中できる」など、社員一人ひとりが自分のメイン業務に力を注ぐことができ、業績への効果も期待ができます。
そのため、障がい者雇用に任せる業務は、現在の部署や会社全体にとってどのような付加価値があるかも重要な検討事項です。
障がい者雇用は企業全体で取り組むことでもあるため、「社内の困りごとが解決する」「任せたい仕事に付加価値がある」など経営陣が判断しやすい視点で雇用推進をしていくことも重要なこととなります。
付加価値を意識しながら経営者とコミュケーションをとり、その上での雇用推進を目指すことが望まれます。
週間予定を組み、実習受入でマッチングを確かめる
最後は、実習受入についてです。
先ほどまでの業務の洗い出しから、付加価値、経営判断へと進めば、いよいよ雇用に向けて動き出すことになります。
まずは、仮の週間予定を作ります。その上で障がいのある方(実習生)を受入れ、週間予定や日々の業務とのマッチングを確かめます。
週間予定はあくまでの仮予定のため、仕事(週間予定)に人を当てはめる形で進めることにもなるため、ミスマッチとなる可能性もあります。そこは、実習中、もしくは実習後に予定を組み直すことでも良いかと思います。
マッチングは、「仕事に人を合わせる」「人に仕事を合わせる」のどちらでも考えていくことは可能です。ただ、人(障がいのある人)は障がい種別や障がい特性、得意苦手などの状況が多様化していることもあるため、どちらかと言えば「人に仕事を合わせる」ほうが結果的には雇用後の定着や戦力化も期待できるように思います。
ここでは、仮の週間予定を活用する中で、「どのような人に合うか」「どのような人材が必要か」「どこを調整すればよいか」を探るための週間予定として
使用いくことでよいかと思います。
まとめ
「適する業務」の探し方は、ひとまずは以上となります。
上記は一般的な進め方でもありますが、適する業務が会社にとっての付加価値を生み、結果的に障がい者雇用が戦力となって活躍することにもなるのなら、それは会社にとっても障がいのある人にとってとWinWinな関係になります。
障がい者雇用でお困りの企業の皆さま。
ジョブジョイントおおさかでは、「企業サポート」として採用前プロセスからご支援できますので、ぜひご相談いただければ幸いです。
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引用文献:障害者雇用導入支援ガイドブック(株式会社インサイト)
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コラムtoiroは、発達障がいやコミュニケーションに苦手さを感じているご本人、学生さん、お子さんを応援するコラム。名前は、十人十色からつけました。
読者の方にとって、少しでも役に立つヒントになればうれしく思っています。
不定期ですが、ちょっとずつ更新していきます。
ジョブジョイントおおさかの所長。
障がいのある人の地域生活支援の仕事をして15年。就労支援に限らず、生活支援・余暇支援・お子さんの支援など、ライフステージごとの支援に携わってきた。趣味は、登山、散歩、読書。現在は、北アルプス登頂目指してマイペースにトレーニング中。