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【toiro】家族ミーティングでお話しした「就労支援のしくみ」について(レジュメ紹介)

9月17日の土曜日、ご家族を対象にした家族ミーティングを開催しました。当日は、15名ほどのご家族が参加してくださり、後半の意見交換ではご家族同士でお子さんの今のことや就職などの将来のことなどを情報交換され、時折、笑い声も聞こえる和やかな雰囲気で開催することができました。

当日、参加できなかったご家族もおられましたので、このコラムtoiroにて、当日のレジュメを簡単にご紹介しておきたいと思います。

1.障がい者雇用の歴史

障がい者雇用は、1976年の身体障がい者雇用義務化から知的障がい→精神障がいと対象となる障がい種別が広がっています。また、「法定雇用率」も1.5%→1.6%→1.8%→2.0%→2.2%→2.3%と制度改正で雇用率が高くなっており、それに伴って障がいのある人が就職して社会参加される機会は増えている現状があります。

また、2018年8月28日には省庁及び地方自治体等の公的機関による障がい者雇用者数の水増し問題が発覚。それ以降は公的機関で働く障がいのある人が増えた背景もあります。ただ、雇用は有期の形態が多く、3年や5年以内で雇用契約が終了することもあり、ジョブジョイントおおさかでは2018年以降に公的機関で就職する人が増えたかというと、特にこの間の実績において就職者はおられない状況となっています。

2.企業を取り巻く障がい者雇用

スライドの図にあるように障がい者雇用は年々増加傾向にあります。増加の理由を見てみると、企業が障がい者雇用促進法にある「法定雇用率」を意識していて、例えば民間企業では働く従業員の2.3%を障がい者雇用する必要があり、法令遵守による障がい者雇用の増加が右肩上がりのグラフに反映されているように思います。

また、企業規模別で見てみると、1,000人以上の大企業が障がい者雇用を牽引していて、43.5〜100人未満などの中小企業の方が障がい者雇用率や達成状況が低くなっています。そのため、厚生労働省は、「もにす認定」といった制度を作って優良な中小企業積を認定することに力を入れていて、厚生労働省のホームページでは認定企業の一覧を公開されているので、就職先企業を選ぶ上での参考にもなるように思います。

企業の雇用状況だけを見ると、大企業が障がい者雇用に理解があり、中小企業はまだまだ理解が不十分と思われがちですが、後でも紹介しますが、中小企業や数十人の小規模企業では経営者と従業員の距離が近いことがメリットとなって、配慮や環境改善、戦力化に繋げている企業も多く、大企業だけではない企業選びも大事なポイントであることをここではお伝えしておきたいと思います。

3.オープンとクローズについて

オープンとクローズとは、障がい者手帳を企業に開示するか非開示にするかという話です。スライドには、オープンとクローズに分けてメリットデメリットを記載していて、簡単にお伝えすると、オープンで就労することで障がい特性に対する配慮が受けやすくなったり、ジョブコーチなどの人的な支援を職場の中で受けることができたりします。また、クローズでの就労においては、求人の選択肢の多さがメリットとしては大きく、その分、クローズな故に配慮や人的支援が受けにくいデメリットもあるため、双方を比較しながら就職活動の進め方を考えていくのが大切であるように思います。

また、「障がい者の定着状況」のグラフでは、障がい者求人、一般求人(オープン就労)、一般求人(クローズ就労)の3つで1年間の定着率を比較した図となっていて、一番左のグラフにある「障がい者求人」が1年後の定着率が一番高くなっています。

「離職の理由」にある一番上の☆印では、「職場の雰囲気・人間関係」が離職要因と回答した障がいのある人は多くなっていて、障がい特性に限らず、人と人との関係性で成り立つ社会人生活でもあるため、職場に本人のことを理解してもらえているかどうかは、長く働く上で大切なことであるように思います。

4.就労支援のしくみ

さて、次は「就労支援のしくみ」について。ここでは障がいのある人への支援について、福祉サービスの種類や合理的配慮について説明できればと思います。

まずは福祉サービスについてですが、ジョブジョイントおおさかでも実施している「就労移行支援」が就活支援や職業訓練の代表的な福祉サービスになります。また、それ以外には「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」などがあり、A型では最低賃金以上の給与をもらって働きながら福祉的な支援も受けられる就労形態であり、B型では給与ではなく工賃(全国平均:約1.5万円/月)がもらえる形態で、ジョブジョイントおおさかの自立訓練・就労移行支援を卒業してA型・B型に行かれる利用者の方もおられたりします。

また、就職後の福祉サービスとしては「就労定着支援」が利用でき、就職後7ヶ月目から3年間使えるサービスになります。就職後の福祉サービスなので、ご本人の収入によっては自己負担が発生する場合もありますが、就職後も月1回程度の支援を受けることができ、ジョブジョイントおおさかも就職者のほぼ全員が就労定着支援を利用されています。

次に、合理的配慮についてです。これは、「障がい者差別解消法」の施行に伴って広まった言葉で「配慮をお願いしたいことを相手に表明することができる権利」とも言い換えることができます。例えば、「職場内での担当者を決めてほしい」「業務マニュアルを作成してほしい」「聴覚過敏のために耳栓を使用したい」など、障がい特性上でどうしても配慮をお願いしたいことを職場に伝えることができ、職場はそれを聞いた上で検討することが求められる制度でもあります。

ジョブジョイントおおさかでは、実習に行くようになったり、就活が近づいてくると「プロフィール表」をご本人と一緒に作り、会社の人が読みやすいものとなるよう作成していきます。プロフィールには「配慮をお願いしたいこと」も記載できるようになっており、会社の方との顔合わせや面接時に活用しています。

5.事例紹介とまとめ

スライドには、就職事例としてジョブジョイントおおさかが作った動画2つをご紹介しています。撮影に協力してくださった株式会社エムツープレストと城野寝具株式会社は、数十人のこじんまりした企業さんではありますが、働くお二人は社長との距離も近く、社長も動画で本人たちの良さを語ってくださり、本人たちの人柄、雰囲気、職場に与える影響をたくさん話してくださっています。

 

さいごにまとめです。

「ジョブマッチング」と書いたスライドにもあるように、ご本人と職場の「相性」は長く働く上でとても大切であるように思います。ご本人にとって「働きやすい職場とはどんな環境か?」「強みを活かす働き方とはなにか?」などを考えながら就職に向けた取り組みをご本人と一緒になって進めていくことが大切であるように思います。

次回の家族ミーティングは1月に開催予定です。

「強み」×「適する仕事」をキーワードに、職場環境との相性の良さで長く働くことができるよう、これからもがんばっていきたいと思います。

 

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コラムtoiroは、発達障がいやコミュニケーションに苦手さを感じているご本人、学生さん、お子さんを応援するコラム。名前は、十人十色からつけました。
読者の方にとって、少しでも役に立つヒントになればうれしく思っています。
不定期ですが、ちょっとずつ更新していきます。

この記事を書いた人
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ジョブジョイントおおさかの所長。
障がいのある人の地域生活支援の仕事をして15年。就労支援に限らず、生活支援・余暇支援・お子さんの支援など、ライフステージごとの支援に携わってきた。趣味は、登山、散歩、読書。現在は、北アルプス登頂目指してマイペースにトレーニング中。