資料請求 見学・相談会申込 お問い合わせ

「ASDの人の生きづらさを理解する」~世界自閉症啓発デーに寄せて~

今年も各地から桜の満開の便りが届く季節になりました。大阪ではソメイヨシノが咲き始め、いよいよ春も本番です。3月から4月というのは、「別れの季節」でもあり、また「出会いの季節」でもあります。職場では異動、学校では進級がありますし、中には就職や卒業・入学といった人生の大きな節目を迎える人も多いことでしょう。いろいろと生活に変化の多い時期ですね。

 

今まで多くの発達障がいの方たちと出会ってきた中で知ったのですが、毎年このシーズンになると、なぜか体調を崩す方が多いのです。もともと「変更」が苦手だということもあります。更に、春は気温の変化や気圧の変化が激しかったり、花粉が多く飛んでアレルギー体質の人にはつらい季節であるのも原因の一つでしょう。しかし、それだけではないようで、ある人はこう話してくれました。「電車の中で、今日は卒業式や入学式なんだな…と一目見てわかる親子や、新品のスーツに身を包んだ新社会人の人たちが目に入ってしまうと、心がざわざわとするんです…」と。その原因は、人によってもまちまちですが、卒業式や入学式が嫌な思い出として残っている場合や、そこから学校に行きたくても行けなかったこと、続けたくても続けられず中途退学したこと…などが連想され、昔の嫌な経験がフラッシュバックしてとてもしんどくなる、というようなことが起こってしまうようです。

 

「嫌な思い出を忘れたくても忘れられない…」というのは、ASDの特性の一つでもあります。トラウマになったり、フラッシュバックに苦しんでいる人はたくさんおられます。

よく聞く話では、夜、布団に入って眠ろうとすると、いろんな思いが頭に浮かんできて眠れなくなってしまい、睡眠不足になったり生活リズムが崩れてしまって、その結果、朝起きれなくなったり、体調を崩してしまうことがあるのです。

 

生活に支障をきたしてしまうほどのフラッシュバックというのは、一般の人はあまり経験したことがないので、なかなか理解しにくいものです。「人間は忘れる生き物である」と言われますが、つらい思い出など、適度に忘れるからこそ次に進んでいけるのであって、これがいつまでも忘れられないとなると、しんどいだろうなぁ…と想像します。

 

ASDの人たちは、いろいろと生きづらさを抱えています。彼らの生きづらさを、できるだけ多くの人に知ってもらって、理解を深めていただきたいと心から願っています。

4月2日は「世界自閉症啓発デー」、また4月2日~8日は、発達障がい啓発週間です。今年も全国で、「Light it up blue」のイベントが開催されます。街でブルーライトを見かけたら、ぜひ、自閉症の人たちに心を寄せてみてください。

 

+++++++++++++++++++

コラムtoiroは、発達障がいやコミュニケーションに苦手さを感じているご本人、学生さん、お子さんを応援するコラム。名前は、十人十色からつけました。
読者の方にとって、少しでも役に立つヒントになればうれしく思っています。
不定期ですが、ちょっとずつ更新していきます。

この記事を書いた人
アバター画像

発達障がいのある二人の成人の母+就労支援事業所の支援員。
2人を育てた経験を活かし、自閉症スペクトラム支援士、ペアレント・メンターとしても活躍中。
最近は、ドラマを見ながら眠ってしまって結末が見れない母のために、それを見越して、そっと録画予約をしておいてくれる優しい息子と娘に感謝する毎日です。