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【toiro】「本人にとっての納得感とは?」 ~親としての実体験から学んだこと~

街ではクリスマスシーズンを迎え、あちこちで美しいイルミネーションを目にするようになりました。一方では、「オミクロン株」という気になる情報も…安心して年末年始を迎えたいものですね。

 

さて、前回は「本人の納得感を大切にする」ということは、その人そのものの存在を受け入れる、その人の思いを大切にする、ということにつながるのではないか…と書かせていただきました。

 

では、本人にとっての「納得感」とはどういうものなのか、どんな時に得られるのか?もう少し深めてみようと思い、本人に聞いてみました。

帰ってきた答えは、「安心できた時かな」「これなら大丈夫と保証されたっていう感じ」ということでした。やはり彼らにとって「安心・安全」というものは本当に大切なのですね。

 

本人が持つ不安が、安心・安全に変わった時に、ようやく納得して一歩が踏み出せる、たとえて言うなら、信号の色みたいなものでしょうか。不安で先に進めず「赤色」で立ち止まっているところに、本人が納得できるまで丁寧に寄り添って話し合うことで、少し不安が和らぎ、「やれるかもしれない」「やってもいいかな」と思えるようになり、赤から「黄色」に変わる。そして、その先は自分を受けとめてくれる環境が整っていれば、信号は「緑色」に変わって、本人は安心して前に進むことができる… いきなり赤から緑にはなれないのです。赤→黄→緑という流れの中、黄色のプロセスを大事にすることで、本人は納得感や安心感を得ることができる。そんなイメージかと思います。

また、私の未熟な見解ですが、黄から緑に変わり一歩を踏み出す際に、タイミングよくポンと背中をたたいてやれるのは親で、その先の環境を整えるのは支援者の役目なのではないかなと思ったりしています。

 

本人は、自分が納得していないことを押しつけられることがとても嫌いだと言います。本人の言葉を借りれば「いいくるめられる」ことが時々あり、とりあえず言われたとおりにやっては見るけれど、たいていの場合は不完全燃焼で、なんで断れなかったんだろう…と自分が嫌になって、怒りや屈辱を覚えてしまうことがあるそうです。それを聞いて、以前専門家の先生からお聞きした言葉を思いだしました。 

「自閉症の人は、真面目で正しく生きたいと思っている人なんです。」まさにその通りだなと、つくづく実感しました。

 

たいていの場合、親は子どものために良かれと思って、「こうしなさい、ああしなさい」と言い聞かせたりするのは日常よくあることですが、そんな時にでも、本人の嫌がることを無理にやらせようとする過干渉になっていないか…と、自らを振り返ることを忘れないようにしたいものですね。結構難しいことですけど…。

ただ、過去の自分を振り返っての反省も含めての話ですが…「本人の納得感を大切にすることは、本人の自己決定(自分のことは自分で決める権利)を尊重することであり、それは将来の自立につながっていくのだ」ということを早いうちから知っておくのは、とても重要なことだと思います。

 

本人が納得感にこだわるのは、自分を守るため、ひいては自己決定の権利を守るために大切なことなのかもしれません。そして、周りの人が本人の納得感を大切にするということは、セルフアドボカシーの観点からもとても意味のあることだと言えそうですね。

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コラムtoiroは、発達障がいやコミュニケーションに苦手さを感じているご本人、学生さん、お子さんを応援するコラム。名前は、十人十色からつけました。
読者の方にとって、少しでも役に立つヒントになればうれしく思っています。
不定期ですが、ちょっとずつ更新していきます。

この記事を書いた人
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発達障がいのある二人の成人の母+就労支援事業所の支援員。
2人を育てた経験を活かし、自閉症スペクトラム支援士、ペアレント・メンターとしても活躍中。
最近は、ドラマを見ながら眠ってしまって結末が見れない母のために、それを見越して、そっと録画予約をしておいてくれる優しい息子と娘に感謝する毎日です。