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【toiro】猫に学ぶ発達障がい24・安全と安心

もうすぐゴールデンウイーク、初夏も近しい昨今です。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
我が家の猫はといいますと、日の長くなってきた夕方、顔を上げて窓から外を見つめています。コウモリやらトカゲやらが通ると、毛を逆立てて唸り声をあげています。縄張りの安全を守っているつもりなのかもしれません。

 

ところで、安全と安心は別のものです。発達障がいの私たちを例に挙げながらお話ししてみましょう。
安全は実際の状態を表す言葉です。ケガや病気、事故といった、大目に見ることのできない問題が起こっておらず、また起こる危険のない状態のことを指します。問題の有無という明確な基準がありますから、問題の起こる頻度と危険の度合いによって、ある程度客観的に表すことができます。
私は発達障がいと、それに伴う感覚過敏の体質を持っています。様々な音が入り交じる環境は、私の耳をこれでもかと殴りつけてきますし、極度の緊張と注意力の低下によるケガや強い疲労感を引き起こします。にぎやかな都市部での暮らしは、私の基準では安全とは言えないわけです。

 

一方で、安心は気持ちを表します。名前に「心」とつくとおり、心が安らかで平和な状態を指しています。当然心の持ち主の主観によって決められます。
先に挙げた私の発達障がいは、今のところ解決することはできません。とはいえ、耳栓によって音を遠ざけたり、気をまぎらわせることのできる本に集中したりすることで、緊張をやわらげることができます。こうして私は、先に安心した心持ちをつくることで、問題の起こりづらい状態≒安全をつくることができるというわけです。

 

私たちの生活には、安全と安心、どちらも必要です。安全だけでは安らかな毎日を楽しむことは難しく、安心だけでは実際の問題に向き合うことが難しいままです。安全のおかげで今日も安心を感じることができ、安心のおかげで安全を維持するために進んで働くことができます。
猫の見張りが、我が家の安全に貢献できているかはわかりません。ですが私たち家族の安心には、この上なく貢献してくれています。猫のフワフワの毛並みとつやつやの大きな目、ゴロゴロ鳴る喉に癒された後は、猫を含む家族の安全を守ろうと、決意を新たにできるわけですから。
皆さまもどうか、日々の安全と安心をお楽しみくださいますよう。

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コラムtoiroは、発達障がいやコミュニケーションに苦手さを感じているご本人、学生さん、お子さんを応援するコラム。名前は、十人十色からつけました。
読者の方にとって、少しでも役に立つヒントになればうれしく思っています。
不定期ですが、ちょっとずつ更新していきます。

この記事を書いた人
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発達障がい当事者。お仕事では記事の執筆・イラストの制作・動画制作などを行っています。
ピアサポートグループの活動・講演会への参加などを通して、地方の町から発達障がいに関する発信を行っています。
こちらのブログ「toiro」では、自分自身の体験・身近な方々の体験談に基づいて「日常生活での気づき」「実際に役立った、二次障がいへの対処・予防方法」「猫の観察記録から学んだ、発達障がいとのつきあい方」などの記事を作成しています。