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N-1グランプリ開催のご報告!〜地域の就労支援ネットワークの自慢大会〜

見る人に楽しんでもらうための工夫をたっぷり、自分たちの活動への思い入れをひとさじ。最後に誇らしさをひとしずく。
今年2019年のN-1グランプリをかたちづくっていたのは、ひとえにこれらの要素だと思われます。
 

開幕挨拶が終わってすぐ、
長野先生の基調講演で語られるのは、愛媛県愛南町での、町ぐるみの活動です。
労働力や社会資源を考えれば、障害がどうこう、なんて区別している余裕はそもそもない。
町の住人全員参加、それぞれが役立てる場所で、全力で取り組むほか道はない! 
のっけから飾ることなく本音で語られる体験談の数々。
生身の大変さ、あるいは思いあたるふしをひしひしと感じてのことか、聴講者さんの空気もこころなしか真剣さが増した様子。
 

つづいて、
主催「たかつき・しまもと障がい者就労支援ネットワーク」より活動のご紹介。
画面には大きく「自慢は、ゆるさ」の文字とパステルカラーの水玉。
一見したかわいらしさとは裏腹、活動したい人が自由に参加できるよう、きっちりとしたシステムの上に成り立っていることが、お話の進行とともにわかってきます。

次からはいよいよ講演プログラム。エントリーされた六団体から、自分たちの活動のプレゼンテーションが行われ、最後に聴講者さんの投票でグランプリが決まる仕組みです。

一番手は「大阪府 就労困難な学生の就労支援連絡会議」
グレーゾーンの方を含めて多岐にわたる相談者さん、対応に苦慮する学校や支援機関。開催された各関係機関での勉強会を通して、各団体どうしの横のつながりが生まれたことが紹介されます。

二番手は「KYOTO JC GROUP KUROGO」
都市部なら社会資源は十分かと思いきや、散らばる団体どうしの連携強化、地域特有の課題点など、独自の視点からの取り組みが行われています。
 

ここで十分間の休憩時間。
聴講者さんの目線は自然、会場の壁に用意されたポスター群へと集まります。
お茶をいただき身づくろいをし、ああ、でも、もうちょっとポスターも見ていたい……
などとそわそわしている間に後半戦スタート。

三番手は「寝屋川市精神障害者就労サポーター連絡会」
最初に「サポ連の紹介」と題して、参加者さんたちの声を動画で紹介。
壇上でも、意見の異なるふたりの参加者さんからそれぞれの意見を直接発表、多様性の実例を伝えます。

四番手は「鳴門市地域自立支援協議会・就労支援部会」
画面いっぱいの写真と迫力の吹き出し、そして飛び散る「!」マーク。緻密な情報以上に、熱意と迫力が伝わります。

五番手は「福島就業支援ネットワーク」
印象的なオープニングムービーにはじまり、合間の動画ではかの有名番組「プロフェッショナル・仕事の流儀」をリスペクト。
凝った動画編集が見どころです。

ラスト、六番手は「千葉県障害者就業・生活支援センター連絡協議会」。
軽妙な語りでもって、他センターの職員さんと共に企業訪問したり、お酒での席で和解したりといった親しみのあるエピソードが紹介されるたび、聴講者さんからは笑いが起こりました。
 

投票時間を兼ねた二度目の休憩には、ポスター発表と意見交換の時間も。
今度こそポスターを見に行き、名刺を交換する聴講者さんたちにも、なごやかな空気が広がっておりました。

そして、今年のグランプリは「福島就業支援ネットワーク」。
締めくくりの拍手とともに、N-1グランプリ2019は、こうして無事閉幕いたしました。

審査員特別賞の鳴門市地域自立支援協議会・就労支援部会には、長野先生より「はにたん(高槻市のPRマスコットキャラクター)」プレゼント!
 

こうして全体を通して振り返るとき、印象的なのは、発表者のみなさんの、とことんまでの前向きさ加減です。
実践の場にある方々特有の「前向きな変換力」といったほうが適切でしょうか。

N-1グランプリはご存じのとおり、それぞれの団体の活動をお披露目しよう! 
もっと言うなら自慢しよう! という趣旨の大会です。
その一方で、プレゼンの中には、こんなメッセージが表れていました。

「活動のなかで、こんな課題が見つかりました」
「地域には支援や社会資源があり、感謝する一方で、モヤモヤすることもありました」
……といった具合に。
N-1グランプリというタイトルの印象だけを受け取っていた当初、最初の基調講演も含めて、あれっと首をかしげたのも本音です。

しかし考えてみればこれも自然なこと。
たとえば学校で、職場で、長い間活動していて、一度も問題を体験されていない方はいるでしょうか。
辛いと口にしない人は、問題にぶち当たったことがないのでしょうか?
そんなわけはありませんよね。

実際、すごいのはここからです。
先に挙がっていたメッセージの後には必ず「どうしようか?」がセットになっていました。

問題をいったん受け取り、自分たちの中で実感する。
そのうえで「現状はこう、理想の状態はこう。ではどうしようか?」と、具体的な取り組みへと変換する。
問題に対しての取り組みがそのまま、皆さんの活動と繋がっているわけです。

(ポスター発表の様子)
 

そしてプレゼンテーションという形に集約する方法、聴講者の皆さんへ伝える方法。これらも実に様々です。
飾らず角をとらず、まるで刀で切り込むように、ずばりと明確に本意を伝える方法。
受け取る側の心をなごませることを大切に、パステルカラーでと丸いデザインの文字を使って、そっと差し出す方法。
あえて視点を後ろへ引いて、自分たちの立場・活動を、全体との関係のなかで伝えていく方法。

「自分たちは何を目的としているのか」
「その目的を達成するため、どんな活動をしているのか」……
本質を魅力的に伝える点においてのみ、どの団体の方も共通していらっしゃいました。

「問題を問題のままにしておかない」
「成果のあがったやり方を、あくまで明るく楽しく、伝わりやすい方法で皆に伝える」
こうした活動の繰り返しが、発表全体から感じられた、ひとしずくの誇らしさの源なのでしょう。

「大変なことはもちろんある。それぞれの団体で、共通する問題、違った問題を体験している。
そのうえで考えてみよう。どうしたらいいだろう?
こうやったらうまくいく! それぞれのやり方を共有して、手を替え品を替え、うまくいくやり方を見つけよう」……
どの発表プログラムにも、こうした明るさと、心意気を感じることができました。
「困難をしっかり受け止め、そのうえで、転じて楽しみを見出す」。
もしや、このN-1グランプリ全体の構成も、主催者の皆さんの計画、もとい工夫の一環だったのでしょうか?

(JJおおさか 広報スタッフ)