資料請求 見学・相談会申込 お問い合わせ

第3回ジョブジョイントおおさか実践報告会に参加して(取材レポート)

去る3月20日、第3回ジョブジョイントおおさか実践報告会が開催されました。

感染症対策として、高槻市の会場での参加者は20名。参加者100名のうち、残る80名はオンライン参加という、新しい試みの場ともなりました。

 

では早速、当日の様子をお伝えいたします。

まずは第1部、基調講演は、鬼頭ともよ先生によります。テーマは「地域医療と発達障害~有希クリニックの取り組みを通して~」。現在のクリニックを含め、十数年間におよぶ開業医としての活動を背景に、現在の発達障害の捉え方についてお話ししてくださいました。特に着目されたのが「治療のプロセスにおける、社会的処方とリンクワーカー」です。

 

発達障害の方は、変化に抵抗を示す・言葉でのコミュニケーションが難しいなどの特性を示す場合があります。このため二次障害の治療に際して、診察・考察を経た上での薬の処方といった通常のプロセスを進めづらい、改善を実感しづらいことがあります。

こうした困難への対応のひとつが、社会的処方……地域のサークルやピアサポートグループといった社会資源を紹介することです。同じ趣味を持つ仲間や、悩みごとを相談できる場を持つことで、二次障害の改善につながることを目指す取り組みです。

もちろんお医者様とて、あらゆる社会資源を知っているというわけにはいきません。そこでリンクワーカー……地域に暮らし、社会資源に詳しい非医療職の方を通じて、適切な集まりを紹介してもらいます。

 

このように、従来の医療の現場を超えた取り組みも含めて「ASD(Autism Spectrum Disorder)からD(障害)を取り除く」と締めくくられた基調講演。専門的な視点からの新しい情報をお知らせいただくと同時に、発達障害への理解と対応を試み続けてこられた、鬼頭先生の姿勢がよくわかる時間となりました。

 

次は第2部、実践報告会です。ジョブジョイントおおさかで昨年度に行われた自立訓練の取り組みの内容とともに、就労支援・職場体験実習を経て就職された発達障害当事者のMさん(仮名)・天瀬克也さんのお話が紹介されました。さらにお二人が現在働いている会社「株式会社ベルシステム24」「株式会社エムツープレスト」から、定着支援担当者の岡本晴菜さん、現場リーダー長の沖長悦子さんが会場にいらしてくださいました。

 

「株式会社ベルシステム24」の発表では、紹介動画の中で、社員のおひとり・島田さんが次のようにおっしゃいました。Mさんの就労を検討するにあたり、最初は業務を任せられるか少し心配していた、と。それでも採用を決めたのは、Mさんのパソコンのスキルに着目したから。結果、Mさんのできる仕事が増えるにつれ、島田さんが別の業務を担当できるようになり、業務の効率化に成功。働く人の視点から冷静に判断し、その上で役立つ能力を取り上げる姿勢を一貫されていることがよくわかるお話でした。

「株式会社エムツープレスト」は資材のプレス加工を行っておられる会社です。配送や材料の引取のため、他社へ出かける業務も含まれています。天瀬さんが就労されることになった当初、社員の皆さんは、苦労をするかもしれないと予想されたそうです。そしてこうもおっしゃいました「では他の職場だったら、苦労や辛いことはないのか? それは違うなと」。現在、天瀬さんは他社への配送を含めた仕事を任せられ、先輩として後輩を迎えるための準備までしておられるそうです。

 

どちらの会社でも、発達障害のための工夫を「自分たち社員にとっても役立つこと」として捉えておられました。写真つきの作業指示書を作ることになったときも「おかげで自分たちも明確な指示ができるようになった」とのこと。それは発達障害当事者のおふたりも同じです。就労支援プログラムを通じて理解した自分の特徴を踏まえ「今の職場で働きつづける」という希望の実現のため、社員の方と日々の行動にひとつずつ改善を進めておられました。

 

休憩をはさみつつ、第3部は質疑応答の時間です。第1・2部にて集計された質問内容について、ご来場されている発表者様に直接ご回答いただきます。

ここで着目されるのは質問の投稿方法。オンライン参加者の質問は、Zoomのチャット機能を用いて投稿されました。しかも質問のタイミングはいつでもOK。質問をアンケート用紙に書き込みながら、提出の時間まで待っていた従来を思えば、ずいぶんと便利になったものです。

 

振り返って、今回の実践報告会の各内容に共通していたもの。それは「理解しようとし続ける姿勢」だったように思われます。

試しにいちど理解しようとしてみることは、誰にとっても比較的簡単です。しかし続けるとなると大変です。これに対しジョブジョイントおおさかでは、専門知識、記録、関係者のご意見……様々な情報を共有することで、より多くの人にとって「理解を試みやすい環境」を提供しています。今回の実践報告会の発信方法、オンライン形式そのものが、こうした環境の一環とも言えます。

 

地域医療を担っておられる鬼頭ともよ先生。株式会社ベルシステム24、株式会社エムツープレストの社員の皆様、就労されたMさんに天瀬さん。

発達障害に関わる方々が、それぞれの方法で理解のための取り組みを続け、前進し続けておられるとわかったこの度の時間。参加者の皆様それぞれにとっても、きっと何らかの理解を得る機会になったことと思います。

 

第3回の実践報告会は、こうしてつつがなく終了いたしました。今から来年の実践報告会を楽しみにしつつ、此度のお知らせを締めくくらせていただきます。

(広報スタッフ)

 

*当日ご報告しました自立訓練の内容は、YouTubeにも公開しています。