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おもしろ専門講座開催〜「靴磨きの職人さん」に来てもらった!〜

「いい靴は、持ち主をいいところへ連れて行ってくれる」……このことわざをご存じの方も、きっといらっしゃることでしょう。

このたび講演に来てくださった方々は、まさにいい靴を仕上げる仕事に携わる方々。靴磨きのサービスを提供する会社「株式会社革靴をはいた猫」にて、障害の有無にかかわらず、職人として働いていらっしゃいます。

「靴磨き」我々の日常生活においては耳慣れない仕事です。それは説明を受けている、ジョブジョイントおおさか利用者のみなさんも同じだった様子。どことなく引き締まった空気がただようなか、まずはVTR映像の視聴から講演はスタートします。

VTR内では、京都に実店舗を開店されたときのエピソードが紹介されています。アンティーク調の店内で働く職人さんの映像を隣に、代表取締役・魚見さんが、会社の創立の経緯をお話ししてくださいました。

魚見さんをはじめとした創立メンバーは、大学生だったころ、卒業後の進路について何度も話し合いました。

「障害の有無にかかわらず、全員で取り組み、働き続けるためには、何ができるだろう?」

そうしているとき、いつも話し合いに使っているカフェの店長さんが、こうおっしゃったといいます。

「一生できる仕事だったら、靴磨きなんてどうだろう?」 身近な人のこうしたアイデアから「革靴をはいた猫」は生まれたのです。

VTRが終わればいよいよ実演。会場中央のテーブルには、初めて見る道具がずらりと並び、職人・藤井さんと丸山さんが待機します。

「靴磨きでは五段階の工程をたどります」説明担当の宮崎さんがホワイトボードに絵を描く間にも、お二人の手元では、作業が進みます。最初にやわらかい毛のブラシで汚れを払い、次にクリームを塗りこみ……言葉少なに手元に集中するお顔は真剣そのもの。仕上げのつや出し用として、ウイスキーが登場したときには、利用者さんたちからはざわめきが起こりました。

そして「どうぞ近くに来て見てください」お声がかかった出たとたん、歓声があがります。

我先にと席を立つ利用者の皆さん。テーブルの周りは見る間に人垣ができあがりました。

ほどなくして、テーブルの上には、ぴかぴかになった革靴が。鏡面仕上げの名にふさわしく、遠目にも黒い鏡のようです。近くで一部始終を見ている、利用者さんたちの興奮は言うまでもありません。

「私のもできますか?」「僕のもしたいです」最初の緊張はどこへやら。口々に希望を伝える声があがって、魚見さんはこう答えます。

「では皆さん、ご自分の靴で実際にやってみましょうか」そして二度目の歓声です。

今日の講座のためにと革靴をはいてきた人、スニーカーも磨けると聞いて胸をなでおろす人。職人さんの助言を受けて、自分の持ちものを手入れする作業に、それぞれ一生懸命に取り組みます。

「カサカサしていた靴がうるおった」「帰ったらお母さんに自慢する」「靴磨きの道具一式が欲しくなった」……ワックスの匂い、ウィスキーの香りがただよう会場は、利用者さんたちの活気ですっかりにぎやかになっていました。

自分の靴と格闘しながらも、利用者さんからは質問が飛びます。

「一日でどれくらいの靴を磨くんですか?」

「二十から三十足くらいです。多い日は四十足くらいのときもあります」

「何足くらい磨いてプロになったんですか?」

「たぶん百回くらいは磨いたかな」

お返事を受けて、あちこちから感嘆のため息があがりました。

「練習中に、二十万も三十万円もする靴がくると、ものすごいプレッシャー。一方で、立派な靴じゃないけど、と言いながら預けてくださるお客さんもいらっしゃいます。どちらの靴も大事な預かりもの。こうした経験を通して、よりよく磨けるようになっていくんです」と藤井さん。「出張サービスの中には、お客さんが献血にいってらっしゃる間に、脱いだ靴をお預かりするというお仕事もあります。お客さんが戻っていらっしゃるころに、ぴかぴかの靴をお返しします」

利用者さんからは「靴への愛がすごい」との声があがります。

「靴磨きは、誰にでもできる、極めることができると考えています。どんな靴が来ても、時間内に綺麗にして、お返しするのが私たちの仕事です」

穏やかな声から、プロフェッショナルとしての姿勢がにじむお返事をいただきました。

 こうして講演が終わるころには、会場のあちこちで、磨きたての靴が輝くことになりました。

「今後の就職活動に、自信をもって取り組めます」ぴかぴかの革靴をはいた利用者さんのひとりは、はにかみながらも、笑顔で答えてくださいました。 「よい靴は、持ち主をよい場所につれていってくれる」。このことわざにおける「よい靴」は、それぞれの持ち主にとってのよい靴です。自分で自分の幸せを、探しにゆける人になる……自分の靴を磨いた今回の体験は、利用者さんたちにとって、そうした体験になったのかもしれません。

( JJおおさか 広報スタッフ )