【特別コラム】自閉症の人が好むこと~動機づけの話~
世界自閉症啓発デーに合わせた特別コラム。今回は、「動機づけ」のお話を考えてみたいと思います。
動機づけはモチベーションとも呼ばれますが、人が何かを始めたり、続けたりする時に必要な「心のエネルギー」みたいなものでもあります。
自閉症の人のことを考えると、物事の理解の仕方や学び方に特徴があります。そのため、学校や職場で、家庭の中でサポートする際には、「好きなこと」「やりたいと思えること」をうまく活かすことが大切になります。 そのためのヒントになるのが、「動機づけ」というキーワードです。
自閉症(ASD)の人が好む動機づけには以下のような特徴があります。
●自閉症(ASD)の人が好む動機
・「合理的なこと」を好む
・やり方が変わらないこと(常同性)を好む
・自分の納得のいく出来栄えを好む
ちなみに、ADHDの人の場合は以下が好む動機といわれています。
●ADHDの人が好む動機
・手近な報酬を見つけることが得意
・短期目標が得意
・社会的な動機づけは保たれやすい
これに対して、自閉症のない人は「社会的な動機づけ」から行動することが多いように思います。
たとえば、
- 「人の役に立ちたい」
- 「みんなと一緒に頑張りたい」
- 「ほめられたい」「認められたい」
- 「迷惑をかけたくない」
などが代表的でしょうか。周りや他者との関係性の中で感じたり、それによる行動につながることは多いように思います。
でも、自閉症の人にとっては、こうした“ふわっとした”ような内容はピンとこないことがあります。先生や上司に怒られないようにしよう、みんなに好かれたい、これをやった方が周りに評価してもらえるなどは、周りや他者との関係性で感じることでもあります。「社会的な動機づけ(=他者からの影響を受けて行動がモチベートされること)」は、自閉症の人にはわかりにくい考え方なんだと思います。
「どんな手順でやるか」
「何がゴールか」
「終わったら次はなにをするか」
明確なこと、見通しがもてること、具体的なことなど、物事がはっきりしていることのほうが自閉症の人は安心できます。それがやる気につながりやすくなるというのがポイントでもあります。
動機づけのカタチもまた、人それぞれ。
自閉症の方が「主体的に取り組める方法」を尊重できるように、日々の中で大切にしていきたいですね。

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コラムtoiroは、発達障害やコミュニケーションに苦手さを感じているご本人、学生さん、お子さんを応援するコラム。名前は、十人十色からつけました。
読者の方にとって、少しでも役に立つヒントになればうれしく思っています。
不定期ですが、ちょっとずつ更新していきます。


ジョブジョイントおおさかの所長。
障害のある人の就労支援に携わって20年となり、講演実績は150件。就労支援に限らず、生活支援・余暇支援・お子さんの支援なども担当してきた。趣味は、散歩、読書、キャンプ、ハイボール。夢の北アルプス登頂を目指してマイペースにトレーニング中。