発達障がいのある大学生の就職活動~合理的配慮の書き方と伝え方~
発達障がいのある学生さんにとって、就職活動は卒業論文や学業との同時並行もあって大変なことも多いかと思います。
そんな学生さんから就職活動の相談でよく聞く悩み事は「配慮願い」のこと。
いわゆる合理的配慮のことで、「どのように配慮をお願いすればよいか」はとても悩ましいようです。
このコラムでは、エントリーシートや面接の時において、どのように配慮願いを伝えたらよいかについて解説していきます。
配慮をお願いしたいことを書き出す
まずは、仕事をする上で「配慮をお願いしたい」と思うことを書き出してみます。ここは、たくさん書き出してOKです。
書いていくにあたっては、以下をヒントに考えてみてはどうでしょうか。
・心配なことはなにか?
・気になることはなにか?
・どうしても苦手なことは?
・苦手なことの一部で助けてほしいことは?
書き出したことを全て職場に伝えるわけではないですが、まずはたくさん書き出してみます。
その上で、家族や大学の先生、就労支援機関の人などに見てもらって一緒に考えてもらうこともオススメです。
優先順位を決めて、3〜5つに絞る
書き出すことができたら、優先順位を考えていきます。
順位づけに迷う場合は、家族や大学の人などと一緒に考えることでもよいですし、順位が同じになっても問題ないです。
書き出した配慮願いについて、なんとなくでも順位が見えてくることでその後の準備にもつながりやすくなります。
まずは、優先順位を決めていく。
そこから上位3〜5つに絞り込んでいく。
そんな流れで進めてもらえたらと思います。
よくある合理的配慮(発達障がい編)
ここで、よくある合理的配慮(配慮願い)についてのご紹介です。
厚生労働省などの公開データを参考に、発達障がいの人の配慮事項について一般的な内容をご紹介します。
以下のスライドは、合理的配慮の事例集を引用したものです。
代表的な配慮事項を3つでまとめています。
また、障がい者雇用で働く人の調査データでは、配慮を望む声として以下が多くなっています。
<離職を防ぐことができたと考えられる職場での措置や配慮として>
・職場でのコミュニケーションを容易にする手段や支援員の配置
・業務遂行の支援や本人、周囲に助言する者等の配置
・上司や専門職員などによる定期的な相談
つまりは、「人的環境」「人的なサポート」を配慮願いとして望む声は多いように思います。
職場や上司とコミュニケーションをとり、関係性を作りながら働くには、職場と本人の間に誰か(支援者)が入ってくれることが安心感や働きやすさにつながっていくのではないでしょうか。
・上司や同僚に自分の障がい特性を理解してほしい
・困った時に相談ができるとありがたい
・専門職員(就労支援機関やジョブコーチなど)にも相談しながら働きたい
上記のような体制を職場にお願いすることも、配慮願いとして必要なことのように思います。
配慮願いの書き方
さて、ここからは書き方です。
配慮願いはエントリーシートや履歴書などに書くことで面接官に正しく伝えることができます。
書き方のポイントとしては、「たくさん書きすぎないこと」。
優先順位で決めた「3〜5つ」を目安にして、以下の例文も参考にしながら書いていきます。
<例文>
・急な予定変更が苦手なため、先の見通しを早めに教えていただけるとありがたいです。
・新しい仕事の際は、見本やマニュアルの提示をお願いしたいです。
・聴覚過敏のため、耳せんやイヤマフをしながら仕事をさせてもらえると助かります。
・口頭でたくさん指示をされると混乱するため、手順書や手本などの視覚的な指示があると分かりやすいです。
例文にもあるように、書き方としては以下をポイントにするのがオススメです。
・配慮願いにあたっての理由を書く
・苦手なことを書いてから配慮願いを書く
・できるだけ具体的に書く
・文章が長くならないようにする
例文も参考にしていただきながら、まずは書いてみてもらえたらと思います。
面接での配慮願いの伝え方
面接では、エントリーシートや履歴書などに書いた配慮願いを基本的には口頭で再度伝えることで大丈夫かと思います。
ただ、面接ですので、面接官から質問される場合はあるかと思います。
<よくある質問として>
・見本やマニュアルがない仕事もあるが、仕事はできそうか?
・配属先の環境は音や匂いがあるが大丈夫か?
・どれくらい配慮したらよいか?
・状況によっては配慮しづらいこともあるがそれでも大丈夫か?
エントリーシートなどに書いた配慮願いについて、具体的なことを複数質問されることもあるため、ここは、家族や大学等の支援者の方と事前に相談したり、面接練習しておくと良いかと思います。
まとめ〜配慮はちゃんと伝えよう〜
今回は、合理的配慮についてまとめてみました。
障害者差別解消法に位置付けられる「合理的配慮」は、障がいのある人からの「意思の表明」があってこそ、職場内で配慮事項の検討が始まります。
つまり、「まずは、職場に伝えること」が大事な一歩となります。
伝え方や書き方に悩むことはあるかと思いますが、そこは家族や大学の先生、就労支援機関の方、もしくは主治医などの医療関係者などに相談しながら進めてもらえたらと思います。
<まとめ>
・まずは職場に配慮願いを伝えてみる
・たくさんでなく少しずつ伝える
・職場と話し合いながら配慮事項を決めていく
配慮のことは、一気に結論が出るわけではないですし、働き始めてからも配慮願いを伝える機会はありますので、まずは少しずつ伝えるための準備をしてもらえたらと思います。
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コラムtoiroは、発達障がいやコミュニケーションに苦手さを感じているご本人、学生さん、お子さんを応援するコラム。名前は、十人十色からつけました。
読者の方にとって、少しでも役に立つヒントになればうれしく思っています。
不定期ですが、ちょっとずつ更新していきます。
ジョブジョイントおおさかの所長。
障がいのある人の地域生活支援の仕事をして15年。就労支援に限らず、生活支援・余暇支援・お子さんの支援など、ライフステージごとの支援に携わってきた。趣味は、登山、散歩、読書。現在は、北アルプス登頂目指してマイペースにトレーニング中。