【toiro】丁寧に使ってくれてありがとう
「きれいに使ってくださってありがとうございます」。皆さま、こんな言葉をごらんになったことはおありでしょうか。セルフサービスのカフェなどで見かけるこちらの言葉、「〇〇してください」ではないところが特徴です。
調べたところによると、これは伝え方の工夫のひとつだそうです。先に感謝を伝えることで、見る人に強制することなく良い選択へと誘導する方法です。
これだけだと「そうなんだ」で済むお話です。一方で、この言葉は単なる工夫ではなく、本当の感謝を先に伝えているのかもしれない……そう感じた出来事についてもご紹介します。
先日、地域の交流会でカフェをお借りした際、主催者のおひとりが、紙細工を作って玄関に飾ってくださいました。ところが小学生くらいの男の子が、紙細工をつかんでカフェの外に持っていってしまいました。
私は内心はらはらしておりました。もし何かの拍子に紙細工が壊れてしまったらどうしようか? 嫌がられてもいいから、今からでも止めに行こうか?
幸いなことに、男の子はほどなくして紙細工をもとの所に戻してくれました。私は「丁寧に扱ってくださってありがとうございます」と声をかけずにおれませんでした。
セルフサービスの設備にも、管理してくださっている方がいらっしゃいます。お客さまにはテーブルやコップを大切に扱ってほしいと、きっとお思いのことでしょう。
そうして1日の終わり、片付けるところが少ない、きれいな状態のカフェを目にしたら? 今回気をもんでいた私のように、心から「ありがとう」を言いたくなるのではないでしょうか。
「〇〇してくださってありがとうございます」。この言葉は伝え方の工夫のひとつであり、心からの感謝の表れでもあります。よい人間関係を築けるよう鋭意努力中、発達障がい当事者のひとりである私にとって、立場や捉え方の違いによる心の変化を実感する貴重な体験となりました。
皆さまはどうお感じになるでしょうか。他の方のご意見も聞いてみたいなと考える次第です。
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コラムtoiroは、発達障がいやコミュニケーションに苦手さを感じているご本人、学生さん、お子さんを応援するコラム。名前は、十人十色からつけました。
読者の方にとって、少しでも役に立つヒントになればうれしく思っています。
不定期ですが、ちょっとずつ更新していきます。
発達障がい当事者。お仕事では記事の執筆・イラストの制作・動画制作などを行っています。
ピアサポートグループの活動・講演会への参加などを通して、地方の町から発達障がいに関する発信を行っています。
こちらのブログ「toiro」では、自分自身の体験・身近な方々の体験談に基づいて「日常生活での気づき」「実際に役立った、二次障がいへの対処・予防方法」「猫の観察記録から学んだ、発達障がいとのつきあい方」などの記事を作成しています。