見学・相談会のお申し込みはこちら

【toiro】シカの美しさ、ゾウの美しさ

「美しい」とは、いったいどうやって決められているのでしょう。時代によっても地域によっても千差万別、現代人の目にルーベンスの描く淑女はちょっと豊満すぎますし、スリムだからといってシーレの「死と乙女」を選ぶことにはそうならないでしょう。精神性や個人の好みまで加えたら、ほんとうに星の数ほどのバリエーションが見つけられそうです。

 

頭が混乱してしまう前に、美しさの範囲を身体的なものに絞って、ここでちょっと提案してみましょう。

「美しさとは、その時代・地域において実現可能なものの中で、とりわけ特徴的なものをそう呼んでいる」だけなのではないか? と。

どういうこと? と思われた方も、そんなの当たり前じゃないの? と思われた方にも、説明する時間をいただきたく思います。

 

骨格の話、特に人体の半分近くを占める、脚の骨の話をいたしましょう。

シカが飛び跳ねながら走っていく様子をご存じの方もいらっしゃるでしょう。軽々として飛ぶように素早い動きです。ああした動作をするのに、すねの長いほっそりした足はとても向いていますし、私たち人間から見て「美しい」姿です。

 

ところがこれが、ゆっくりとした動きとなるとどうでしょう。生まれたての小ジカがひざ下をがくがく震わせて立つところが想像されるのではないでしょうか。

 

すねの長い脚とはすなわち、つま先から膝までの距離が長くなるということ。速く動かすことができる代わり、つま先の細かいコントロールは難しくなってしまうのです。

一方で、普段のんびりと動いて見えるゾウが、時には前足だけで「逆立ち」できるのは、腿のほうが長い脚……ゆっくりとしているけれどコントロールに優れた脚を持っているからなのです。

そしてこれらの特徴……すねと腿の骨どちらが長いか、飛び跳ねるのとゆっくり動くのとどちらが得意か……は、コーカソイド系とモンゴロイド系の人間の骨格の特徴、ポルカと日本舞踊の特徴とも一致しています。

 

もうおわかりですよね。それぞれの地域において「自分たちの体を動かしやすい方法」を強調した中に、美しさを見出した、それだけの話だということです。

 

ここまでご覧の皆様には「あなたらしい美しさ」とは決して慰めでも言い訳でもない……むしろ生物学に基づく根拠のある言葉だと、ご納得いただけたのではないでしょうか。

シカは飛び跳ねる姿が美しく、ゾウは緻密なコントロールの妙が美しい。あなたは、あなたの体が最も動かしやすい方法……すなわち「あなたが生き生きと過ごせる方法」を「美しい」と呼んでかまわないってことなんですから。

 

+++++++++++++++++++

コラムtoiroは、
発達障がいやコミュニケーションに苦手さを感じているご本人、学生さん、お子さんを応援するコラム。
名前は、十人十色からつけました。
読者の方にとって、少しでも役に立つヒントになればうれしく思っています。
不定期ですが、ちょっとずつ更新していきます。

この記事を書いた人
須藤真理子(Suto Mariko)

発達障がい当事者。地方都市でピアサポートグループの活動を行っています。
当事者の視点から、自分で試してみた情報の共有や周知活動に参加しています。
主な内容は「食生活と発達障がいの関係」「実際に役立った・便利だった二次障がい対処法」「日常生活での気づき」など。
好きなことは、絵を描くこと・物語を書くこと。
「二次障がいでつらいとき、ものづくりにエネルギーを使う」のは、かなり実用的な対処方法だとお伝えしたい次第。