【toiro】相貌失認の話
眼鏡をはずしたら「誰ですか」と言われた。こんなことって考えられるでしょうか? 漫画のお約束に限るなら、案外よくあるかもしれませんね。とはいえ現実に言われたとしても、相手がふざけているとは限りません。
なぜならこの世には「相貌失認」というものがあるからです。
「相貌失認(そうぼうしつにん)」。読んで字のごとし「人の顔がわからない」状態のことです。いくつかある原因のうちのひとつとして、発達障害との関連が挙げられています。
「なあんだ、私だって顔を忘れることくらいあるよ」と思われた方、いらっしゃるかもしれません。ところがこの相貌失認、単に覚えた顔を忘れてしまうのとは少し違います。
私の例をお話しましょう。
保育園に通っていたころ、私の世界には「眼鏡をかけている人」「裸眼の人」の二種類が存在していました。家族のなかで父だけが眼鏡をかけていたからです。
そして小学校に進学後、私には「眼鏡をかけた男の先生」に特別なつくという謎の現象が起こりました。年齢も担当学年も関係なし。一度見かけたかどうかの生徒(私)に、さも親しげに話しかけられて、驚いた先生(眼鏡)もいたようです。
つまり私の認知機能は、こう判断したわけです。
眼鏡をかけた男の人=父と同じ種類の人=安心してもいい人
ちょっと判定がゆるすぎます。これではカーネルサンダースも食い倒れ人形も同一人物と判断されかねません。
そして驚いたことに、このゆるゆる判定、現在も継続しているふしがあります。私が人に会ったとき、真っ先に確認するのは「目のまわり」。ごく一部のパーツを確認して、人の顔を判断しているのです。
(相手が眼鏡をコンタクトに替えたらどうするのかって? お察しの通りです)
裏返せば「一部のパーツの形は覚えられるし、人の顔だということはわかるのに、顔を見てどの人か見分けるのが難しい」から、こんな方法を取っているのです。これが相貌失認のややこしいところです。
程度も役立つ対処方法も、人によってばらばらな相貌失認。もしもあなたの身近に、こんなふうにおっしゃるお友達がいらしたら、この記事のことを思い出してみるのもいいかもしれません。「私は人の顔が覚えられないんです。自分の父でも、眼鏡をはずしてしまったら、誰だかわかるまでに十秒くらいかかるんですよ」
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コラムtoiroは、発達障がいやコミュニケーションに苦手さを感じているご本人、学生さん、お子さんを応援するコラム。名前は、十人十色からつけました。
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不定期ですが、ちょっとずつ更新していきます。
発達障がい当事者。お仕事では記事の執筆・イラストの制作・動画制作などを行っています。
ピアサポートグループの活動・講演会への参加などを通して、地方の町から発達障がいに関する発信を行っています。
こちらのブログ「toiro」では、自分自身の体験・身近な方々の体験談に基づいて「日常生活での気づき」「実際に役立った、二次障がいへの対処・予防方法」「猫の観察記録から学んだ、発達障がいとのつきあい方」などの記事を作成しています。